ゲーム概要
タイトル
DEATH STRANDING
ジャンル
アクション、アドベンチャー
開発元
コジマプロダクション
販売元
505 Games
リリース
2020年7月14日
日本語対応
ネイティブ
定価
6,490 円
購入価格
0 円
適正価格
1,000 円
「DEATH STRANDING 」は伝説の配達人「サム・ポーター・ブリッジズ」となり、預かった荷物を目的地まで運ぶアクションゲーム。
広大なマップで険しい山道や激しく流れる川を越え、如何に安全かつスピーディーに荷物を届けられるかを問われる。
リリースの二年後には多くの新要素を追加したアップグレード版が「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT (以下DC版)」として販売。
さらには続編となる「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」が2025年に発売されることが発表された。
評価
前回の記事 で述べたように、ゲームは大きく分けて「システム」と「コンテンツ」の側面がある。
調べた限りDC版ではシステムの改善などは無く、コンテンツが追加されただけのようだ(それによって少しゲームバランスが調整されたようだが)。DC版はプレイしていないが、これから述べる評価は主にシステムに対して のものとなるため、内容にDC版との差異はないと思う。
この作品、はっきり言うと開発費を無駄遣いして無駄を増やしたゲーム である。
価格
価格はプラットフォームによってバラつきがあるようで、Amazon ではPS4 用が2000円程度、PS5用のDC版が4000円程度で販売されていた。
よくこのゲームに対して「豪華キャスト」「映画のような迫力のムービー」などという売り文句を見かけるが、このゲームに出す金を映画館かサブスクで費やす方がより高品質の映像と音響を楽しめるだろう。ゲームの本質はあくまでゲーム部分であって、ストーリーやそれを補完するムービーはあくまでゲームを楽しませる一要素でしかないのだ。
私はEpic Games のフリープレイで配布されたものをプレイしたが、実際それで良かったと思っているし、無料じゃなければそもそもやっていなかったと思う。
続編も同じくフリープレイにならない限りはプレイしないだろう。
ゲームシステム
本作の触れ込みは「配達に特化した全く新しいオープンワールド 配達シミュレーションゲーム 」だと思っていたが、実際にプレイすると「よくあるTPSに配達要素を添えたアクションゲーム」という印象だ。
なぜならこのゲームでは普通に敵が登場 し、こちらも当然のように武器を持っており、戦闘は避けては通れない ものだからである。脅威を避けるタイプのアクションを期待していたら、MGSVの二番煎じだったわけだ。
ただ戦闘要素はかなりカジュアルであり、まず戦闘で負けることはほとんどない。作業感だけが増し差別化にも失敗しているこの要素は果たして必要だったのだろうか。
しかしながら、肝心の配達要素はコンセプトをそのまま貫いたような荒削りな作りであり、相対的に面白いと言える部分が戦闘面になっているのもまた事実である。
また、マップは複数に分かれており、初めから終わりまで地続きというわけではない。
しかもファストトラベルはかなり限定的な仕様になっており、限られた施設間でしか使用できない 。その上、ファストトラベルを行うとほぼ全ての装備や荷物をその施設に置いていってしまう 。荷物に関しては配達がメインコンテンツなのだから当然ではあるが、上で述べた武器類や配達を補助する道具すらも置いていってしまうのはかなり不便である。
実際のところ素材には困らないため飛んだ先で新たに装備を作成すれば良いのだが、その手間をかける必要がどこにあるだろうか。
過剰な演出
元・大統領(故)によるリサイクルの感謝
恐らくこのゲームをプレイした人が感じるであろう初めの違和感が演出のくどさ だろう。
配達の完了時には受取人から感謝されるのだが、その内容はただ無駄に長いだけの定型文 である。
一つの依頼を受注してから完了するまでに表示されるカットシー ンは3~4回で、特に荷物を届けた際には「荷物の確認と感謝・称賛」→リザルト画面→「またよろしく」という風に上記の典型文でリザルトを挟むしつこさ。
また、フィールドで拾った素材は「リサイクル」することで使いやすい形に変えられるのだが、このリサイクル時にも無駄に壮大な効果音 (ここだけ音量設定を半分にしたいくらい、本当に音が大きい)と共に亡くなった大統領の顔写真で感謝される(上画像)。「Reconnect the World(世界を再び繋げて)」というのはこの大統領の理念だが、リサイクルは全くその理念とは関係ないため演出の内容も意味不明 である。
ストーリー上の重要な転換点とか、何か大きな実績を成し遂げた時にこういった演出があるならわかるが、一度のプレイで何度も遭遇するような場面 で一々カットシー ンが入るのは、開発していて違和感が無かったのか甚だ疑問である。
私は実際これらの演出に辟易したため、途中からメインストーリー以外の依頼をほとんど行わずにリサイクルも極力避けるようになった。まさにゲームの寿命を縮める演出 である。
これら以外にも、「フィールド素材を拾った際」、「雨が降った際」、「ケースに入った武器を取り出す際」に入るスローモーション演出、車を乗り降りする際の演出、車に荷物を積み降ろしする際の演出など、鬱陶しさは満載である。余談だが後者はカメラが強制的に動かされるタイプの演出で、一定の条件を満たさないと演出後にカメラの位置が元に戻らない というバグっぽい現象が起きる。
最悪のUI
依頼受注画面
UIはとにかく情報量が多いだけでそれらが全く機能しておらず、使われているアイコンの説明もほとんどない。MGSVの時にもUIの酷さは言われていたにも拘らず、改善するどころかむしろ悪化しているように思える。少なくとも私が今までプレイしたゲームの中では最悪のデザイン と言って良い。UIに関する不満を述べるとキリがない、というより褒める部分がないレベルなので、特に気になったものを抜粋する。
体が傾いて荷物が崩れそうになった際にはL2・R2ボタンで「ふんばる」動作を行う必要があるが、体が傾く度に「L2 ふんばる」といった具合でQTE のごとくアクションアイコンが画面に表示されて非常に鬱陶しい。設定から無効化することはできるのだが、すると次は初めて行う動作に対しても何も表示されなくなり、進行にかなり時間を要する場面もあった。QTE でボタン表示がないと思えばわかりやすいだろうか。
アクションアイコン、またはアクションマーカーと呼ばれるこのHUDは「初めて行う時やチュートリアル で表示する 」というのが一般的な認識だと思っていたが…。
マップに関しても、個人的にはかなり残念な作りになっている(上の画像の背景に写っているものがマップ)。
概要で述べたように、このゲームは山や川、さらには敵対勢力の手を乗り越えて迅速に 配達することが求められる。しかし、マップを読んでルートを計画し、(装備も荷物同様に重さがあり、多すぎると配達に影響が出るため)最小限の装備でそれを実行する、という戦略的なプレイはこのゲームで推奨されていない。マップでは二点間のラインを引いてナビにすることができるが、如何せんマップの精度が低すぎてまず計画ができないのだ。近未来のテクノロ ジー が登場する世界で、Googleマップ 以下の画質の航空写真に等高線すらないというのは、(この世界ではかなり重要視されている)配達人への配慮に欠けすぎではないだろうか。
さらに言うとフィールドには依頼品以外の様々な荷物が落ちているため、それらを拾おうとすると計画通りのルートは当然辿れない。つまり「大まかな方角だけ見失わないようにしつつ、行き当たりばったり で移動する」のが基本になる。
だがここでもまた問題が発生する。煩わしいHUDに溢れている本作において、コンパスは常時表示できない 。上下の起伏が激しくマーカーだけでは方角を見失いそうになるが、コンパスを表示するにはL1ボタンを長押ししてコンパスモ ードにする必要がある。
どこまでもチグハグで、ユーザビリティ に著しく欠けた設計なのである。実はUIの文字を大きくする アップデートが入ったことがあるようで、そんな些細な調整が後出しになったあたりテストプレイ不足は明らかだろう。しかも改善点はもっと多いだろうに、根本的に設計が悪すぎて手を付けられなかったのだろうか。
「A」と書かれたマーカーを見つけるのに何秒かかっただろうか?
快適とは言えない操作性
このゲームは操作に関してもいくつか問題がある。ちなみに私はDUALSHOCK4でプレイしたので、以下はコントローラー操作での話になる。
問題はボタン割り当てが被りすぎている こと、長押しを短押しとして認識してしまう ことにある。
特に酷いのが□ボタン だ。□ボタンには様々な操作が割り振られており、短押しでは近接攻撃、車両の乗降、フィールド端末へのアクセス等ができ、車両の近くで長押しすると荷物を乗せるためのメニューを開くことができる。
まずボタン割り当ての問題だが、車やフィールド端末にアクセスするために□ボタンを押すと、大体まずパンチが出る 。2~3回またはそれ以上にパンチが空振りしてやっとやりたい動作ができることもある。あまりにストレスである。
長押しの問題は想像しやすい。車両へ荷物を乗せるために□ボタンを長押しすると、やはりパンチが出る 。「一定時間内にボタンを離さなかった場合は長押し判定がされ、短押しに割り振られたアクションは行わない」というのが一般的な作りだが、本作はそれができていない。
そもそも戦闘中か否かを判別するシステムがありながら、非戦闘中にパンチが出るのは設計の怠りとしか思えない。ちなみに△ボタンのアクションはかなり少ない。
ストーリークリア時に様々なカウントデータ(歩いた距離など)を見せられたが、せっかくなら空振りしたパンチの回数もカウントして欲しかったものだ。
また、本作にはカメラリセット の操作が存在しない。カメラ位置をプレイヤーキャラク ター後方に、向きをキャラク ターと同じ方向にするあの操作である。三人称視点のほとんどのゲームでR3(スティック押し込み)に割り当てられている定番の操作だが、本作でそのボタンは「カメラ位置の左右切り替え」になっている。そういえばMGSVもそうだったか。
ステルスアクションがメインのMGSVではそこまで気にならなかったが、フィールドの移動がメイン で周囲を見渡す本作でこの操作は全くと言っていいほど必要ないのである。少なくともカメラリセットを押しのけてまで採用するものではない のは明らかだ。実際に私がプレイした限り、カメラをリセットしたい場面は数多くあっても、カメラの位置を切り替えたいと思った記憶はない。
しかもこの問題、「過剰な演出」の項で述べた「車に乗る際にカメラが強制的に動かされる 」現象と最悪の掛け合わせになっている。私はスティックの感度を低めにしているため、180度反転させられた時なんかは特にうんざりする。
評価まとめ
無駄な戦闘、無駄な仕様、無駄な演出、無駄なUI、無駄なボタン割り当て、無駄に凝ったムービー…
引き算を覚えられないゲーム作りのお手本のような作品が「DEATH STRANDING」である。